閣議決定 社会保障費抑制の布石に

政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針2018」が15日に閣議決定され、社会保障分野についても改革の方向性が大筋で示された。今年秋には自民党総裁選、来年春に統一地方選、夏は参院選と選挙が続くため、財務省が求めた社会保障分野での大幅な負担増は見送られた形。ただ、増大する社会保障費を抑制するため、厚生労働省は一部を今後取り組む医療、介護、年金の制度改革への布石としたい考えだ。実現の可能性が高い見直し案を中心に紹介する。【阿部亮介】

予防事業 市区町村主体に
 ●医療

 医療では、財務省が求めていた75歳以上の高齢者が医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担(原則1割)を2割に引き上げる案は具体的な記述は見送られ、「後期高齢者の窓口負担のあり方について検討する」との表現にとどまった。ただ、厚労省幹部は「直近の見直しはなくなったが、将来的な検討は避けられない」と話す。

 高齢者が病気や介護が必要な状態に陥ることを予防する仕組みの制度改正も検討する。現在は予防事業が都道府県単位と市区町村単位に分かれているが、住民に身近な市区町村主体の事業にしたい考えだ。来年の通常国会に法案を提出する方向だ。

 また、医療・介護サービスの自己負担割合が現役世代並みの3割となる高齢者の拡大も検討する。医療保険では70歳以上で世帯年収(2人以上)が520万円以上だと3割負担になるが、給与所得者の平均年収は420万円。財務省は、現役世代とのバランスを取る観点から70歳以上の年収基準を引き下げる余地があるとみている。ただ、来夏の参院選前は避け、早くても来年夏以降になる見通しだ。

ケアプラン有料化検討
 ●介護

 介護分野では、高齢者が介護保険サービスを利用する際にケアマネジャーが作成するケアプラン(介護計画)の有料化を検討する。今後、厚労省の介護保険部会で議論する方針だ。現在の自己負担はゼロのため利用者の反発も予想されるが、議論がまとまれば20年の通常国会に提出する介護保険法改正案に盛り込む。

 ケアプランは要介護認定を受けて介護サービスを利用する際に、サービスの種類や利用回数を定める計画。基本的な作成費用は要介護3以上で約1万4000円で、仮に1割負担となれば1400円の負担が新たに生じる。定率負担ではなく、数百円といった定額負担になる可能性もあり、負担のあり方も含めて議論となる見込みだ。

 財務省が有料化を求めており、「利用者側からケアプランの質についてチェックが働く」とするが、与党内にも慎重論があり調整が難航する可能性もある。

働く高齢者の減額縮小
 ●年金

 公的年金では、一定の収入がある高齢者の年金額を減らす「在職老齢年金制度」の見直しを、厚労省の社会保障審議会で議論する。年金の減額幅を少なくして、働く意欲をそがないようにするのが狙いだ。既に年金部会で検討が始まっており、20年の通常国会に関連法案の提出を目指す。

 在職老齢年金は、60~64歳は賃金と年金の合計が月28万円超、65歳以上だと46万円超が対象で、賃金が高くなるほど年金の減額幅も大きくなる。対象者は14年度時点で126万人。

 政府は健康な高齢者が働き続け、社会の担い手になれるよう社会保障制度や雇用制度の見直しを進めており、この流れの一環。自民党の一部から見直しを求める声が上がったこともあり、検討が具体化した。

 ただ、年金給付額が増えるため、経団連は「必要な人への給付の重点化に反し、年金財政への影響が懸念される」と慎重な立場だ。穴埋めする財源の確保も必要で、議論がスムーズに運ぶかは不透明だ。

具体的な数値目標見送り
 ●自然増の目安

 「骨太の方針」で焦点となっていた社会保障費の自然増を抑制する19年度から3年間の「目安」は、「高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」との表現で決着し、具体的な数値目標の明記は見送った。

 3年前の15年の骨太方針では、16~18年度の3年間で自然増を1・5兆円程度に抑える「目安」を設けた。医療や介護保険の自己負担増や、サービスの見直しなどで、毎年約5000億円の目安を達成してきた。

 今回は、来年春の統一地方選や夏の参院選を控え、与党内には負担増につながる具体的な数値目標の明記に反対する意見が多く、財政再建を図りたい財務省も、額の記載は断念した。

 19年度からの3年間は高齢化の伸びが鈍化するため自然増も低くなり、「目安」の水準はこれまでの年5000億円から下がる見込みだ。とはいえ、財務省が年末の予算編成時に自然増の圧縮を求め、厚労省との折衝で削減幅が決まる構図は変わらない。ただ、厚労省幹部は「今年の年末は参院選を控えているため、国民の負担増につながる抑制策は採らないだろう」との見通しを述べる。骨太には「各年度の歳出については一律ではなく柔軟に対応する」との記述も盛り込まれ、目安を多少上回る余地も残された形になった。

 

サイト:毎日新聞
URL:https://mainichi.jp/articles/20180617/ddm/016/010/032000c

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