[介護のいろは](7)福祉用具 どう選ぶ?

介護保険では車いすや介護ベッドなどの「福祉用具」を割安で使うことができます。上手に活用すれば生活の幅が広がり、介護する人の負担も軽減できます。(辻阪光平

暮らし方応じ相談員提案

西出さん(右)に介護ベッドや車いすの状況を確認してもらう長沢さん夫婦(兵庫県西宮市で)

 「少し体を起こそうか。見える景色が変わるし、たんも出やすくなるよ」

 兵庫県西宮市の長沢鈴代さん(74)が介護ベッドで過ごす夫の静男さん(81)に呼びかけ、リモコンを操作して背中の角度を調節した。

 静男さんは要介護5。脳出血で倒れて寝たきりになり、2年前に退院した際、自宅1階の居間に介護ベッドを入れた。以前は2階で寝起きしていたが、ケアマネジャーと相談して、自宅を訪ねる親戚らと静男さんが交流しやすい居間を普段の居場所に決めた。長沢さんは「夫はこれまで通り、私と友人がおしゃべりする様子や、好きな庭の草花を眺めていられる」と話す。

 ベッドは足元の角度も電動で調整でき、膝を立てた姿勢を取りやすい。「着替えの介助が楽。高さも私やヘルパーさんの背丈に合わせて変えられるので、腰への負担がかかりにくい」と実感する。

 小回りが利く室内用車いすも借り、デイサービスに週2回通う時は居間の掃き出し窓から庭先へ出られるよう、スロープも利用している。普段、スロープは折り畳んで、窓の外側に置いている。

 計6種類の用具をレンタルで利用しており、負担額は月約3800円。長沢さんは「入院中は在宅介護は難しいと思っていたけど、福祉用具のおかげでとても助かっています」とほほ笑む。

■割安レンタル

 介護保険で利用できる福祉用具はレンタルが基本だ。介護ベッドや車いす、歩行器など13種類あるが、要介護度が軽いと使えないものもあるので注意が必要だ。

 ポータブルトイレや浴槽内のいすといった、肌に直接触れるなどしてレンタルにはなじまない入浴・排せつ関連の5種類は購入して利用する。

 利用したい場合は原則、ケアマネジャーに相談する。専門知識を持つ「福祉用具専門相談員」がいる指定の事業所を紹介され、希望する暮らし方や自宅環境に合わせた用具を提案してもらえる。

 レンタルも購入も原則、所得に応じて費用の1~2割(8月からは1~3割)を負担する。購入する場合は、年間10万円を上限として介護保険が適用される。購入品は、返品・交換の条件や修理への対応も確認しておく。

 レンタルが始まれば事業所担当者は定期的にアフターフォローに訪れ、▽故障の有無▽使い方が間違っていないか▽体の状態の変化に応じて用具の見直しが必要か――などを確認してくれる。

 静男さんを担当するヤマシタコーポレーション尼崎営業所(兵庫県尼崎市)の西出真理さん(28)は「介護保険適用外を含め、扱う商品は1000品目以上あります。使用に伴う不安や疑問のほか、散歩で体力を維持したい、自宅の風呂に入りたいなどの希望があれば、相談員に伝えてください。そうした情報が最適な用具選びにつながります」と話している。

[専門家に聞く]元気なうちから知識を

  福祉用具を選ぶポイントについて、シニア用品の研究開発などを行う「高齢生活研究所」(京都市)所長の浜田きよ子さんに聞いた。

 福祉用具は、利用者のそばにあり、暮らしを豊かにしてくれる存在です。それだけに、体格や体の状態、生活環境に合うものを選ぶことが何より重要です。車いすをより適切なものに替えただけで、自力でトイレに行けるようになった人もいます。

 4月から、福祉用具専門相談員に対し、機能や価格帯が異なるレンタル商品を複数提示することが義務づけられました。まずは利用する際、説明をよく聞きましょう。「使い方が覚えきれない」「操作が難しい」と思ったら、率直に伝えてください。使っているうちに不都合を感じた場合も、遠慮なく相談員やケアマネジャーに相談しましょう。

 マットレスなど、使い続けるうちに消耗していくものもあるので、交換時期の目安についても確認してください。

 デザインや機能性が優れた製品も増えてきました。ポータブルトイレでも、いすにしか見えないものや、水洗式のものもあります。なるべく元気なうちから、本人も家族も用具のカタログを見て知識を得ておくことをお勧めします。実際に使うことになった場合も、慌てずに済むはずです。

サイト:yomiDr.(ヨミドクター)
URL:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180702-OYTET50000/

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